猟人日記と題されてはいますが、狩人の 「私」 を主人公にした短編集と言えます。約百五十年位前のロシアで、貴族社会が没落していく頃を背景にしています。貴族である私が、狩猟に行く先々で、農奴たちの自然な心に感じる様子が描かれています。 その中の一遍に 「チェルトプハーノフとネドピュースキン」 があります。ある貴族が死亡し相続人が一堂に会します。今や実態を失いつつある 「貴族」 によりかかって生きている人たちが集まってきます。その中でも力関係があるわけですから、当然最下位に位置する人もいます。人を馬鹿にした態度と言葉で 「一体どこの椋鳥か、きかしてもらいましょう。」 と言われた弱者に、「おれのご先祖は皇帝陛下にお仕えしたんだ、貴様こそ何者だ」 と逆襲され引き下がるくだりがあります。貴族階級にある作者の視点がよく表わされていると思います。零落した貴族出身の父と、はからずも莫大な資産を相続した母があったからこその作品ともいわれています。 この小説を読んだ皇帝は農奴解放令を発布しました。 |
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