早春・クヌルプへの追憶・終焉の三部に分かれています。「早春」 は主人公クヌルプの若かりし頃を本人の言葉で、「クヌルプへの追憶」 は同時代を友人の言葉で、「終焉」
は短い一生を終える中年の主人公の言葉で綴られています。 主人公は或る小さな失恋をきっかけに、優秀な成績の学業を捨て、貧しい放浪の人生を始める。放浪の生活をしてはいるが、決して放埒ではない。終焉はふるさとを見下ろろすことのできる雪の積もる森の中で一人迎える。早春は主観的な自己との対話、クヌルプへの追憶は客観的な自己との対話、終焉は絶対他者である神との対話と読めます。主人公は全編を通じて他人への恨みはなく、さりとて深入りする訳でもなく、淡々と一定の距離を持って接している。或る意味では人間に対する不信でもあり、孤独感でもある。自然の中にいるときは安らぎを感じ、他者と接しているときに孤独を感じる主人公ヘルマン・ヘッセは、多分に東洋的ともいえます。 失意の中での最後であるはずの時に、神との対話の中で、これまでの生き様を肯定する部分は、磨かれた心の輝きとも取れます。 |
円山公園 【本文との関係---発行季節】 枝垂れ桜 (参考) |
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