《私の本棚  第十一》     1998年(平成10年)2月
     
    「インドで考えたこと」   堀田善衛 著

 「インドは人種のるつぼ」 とは、よく言われる言葉です。人種・宗教・言葉が一国家とは思えないくらいに有り、恐らく同じくらいに別個の価値観のグループが有るのでしょう。昨年テレビで、俳優がインドを貧乏旅行する設定の番組がありました。朝、聖なるガンジス河で口をすすぐ人、沐浴をする人、そしてそのすぐそばに死体。そこに死体が有ることは、全く何の不思議もなくいやそれ以上に、生きた人間同士がすれ違うのと同じ様に見えてしまう不思議な光景。河岸にある死体野焼場。その灰をガンジスに掃き捨てる。降り注ぐ灰の下で子供が泳ぐ。私たちの価値観ではとうてい理解できない国。
 堀田善衛がインドに行かれたのは1956年と言う事ですが、今もあまり変わりないのではないかと思います。原子爆弾も開発出来る位の知的レベルと同居する混沌とした世界。もし私が目的を持たずに訪問したとすると、帰国する気持ちを失なってしまうのでは無いかという、漠然とした不安と魅力を感じます。 
紅梅 北野天満宮






 北野天満宮 (参考)   紅梅

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