《私の本棚
第八十八》 平成16年7月
「郡上の南天」 水上 勉 作
大正八年福井県生まれ。昭和三十六年 「雁の寺」 で直木賞受賞。「五番町夕霧楼」 と 「飢餓海峡」 は映画化されていたと思います。 時代は東海道新幹線が開通するより前、岐阜県郡上八幡に旅し、安久田という村を訪れた時のことです。数万本の野生の南天が山を埋めており、これを天の恵みとして生活の糧としている様子が紹介されています。現在では百戸あまりの農家が十五ヘクタール程を栽培し、京阪神へ正月用に出荷しているそうです。 郡上八幡といえば、美しい水と郡上踊りが有名です。吉田川に沿った家並みとその中を流れる水路。イワナや鯉が放たれています。その盆踊り音頭には 「医者の薬礼と安久田の牡丹、取りにゆかれず先次第…」 という文句があるそうです。往診に行った薬代を取りに行っても山仕事で留守。牡丹に見えても行ってみれば南天。どちらもがっかりするという掛詞。 人も水も清明。 |
郡上八幡 吉田川 【本文との関係---地理】 |
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