《私の本棚 第五十八》  平成14年1月 

     「夜明け前」
    藤  

 大作、紛れもない大作。しかし普通に読んでインパクトがあるかというと、そうではない。冒頭はそらんじているひとが多いかも知れない。
木曽路はすべて山の中である。あるところは岨づたいに行く崖の道であり、あるところは数十間の深さに臨む木曽川の崖であり、あるところは山の尾をめぐる谷の入り口である。一筋の街道はこの深い森林地帯を貫いていた。」 藤村は木曾馬籠で代々本陣・庄屋をつとめた家に生まれた。しかし明治維新を境に、街道の参勤交代宿場としての役割がなくなるにつれて没落して行く。そんな時代を生きた実父と主人公を重ねて話が展開して行く。現在では情報は身の回りに溢れている。しかし文明の夜が明ける前には、江戸や京の情勢情報はこの宿場で交差し、落とされていく。江戸の情報は京の人より早く、京の情報は江戸の人より早く耳に入る。

 ある時、馬籠から妻籠への道、渋滞を避けるため地元ナンバーの車について山中を走りました。走っている車もありましたが、歩くべき道だったと反省しています。 
木曾,馬込





  木曾馬籠宿
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