《私の本棚 第二十六》    1999年(平成11年)5月
 
    「ハツカネズミと人間」   スタインベック 作

 ジョージとレニーの二人の労働者が、カリフォルニアの農場で過ごした数日間を物語としている。小と大・智と愚・並みの体力と怪力。およそ似つかわしくない二人の友情、あるいはそれに似た庇護する者とされる者の関係。その関係は、レニーとハツカネズミ、更には怪力のレニーと彼以外の力弱き者、白人と黒人、農場主と労働者、金持ちと貧乏人の関係の象徴とも受け取れる。
 レニーはハツカネズミを大変可愛がるが、力加減が分からないためにすぐ死なせてしまう。小犬なら良いだろうと思っても、やはり同じように死なせる。直ぐに暴力を振るいたがるボクサーの農場主に一方的に殴られて、何気なく掴んだ相手のこぶしを握り潰す。気の多い農場主の妻にからかわれて死なせてしまう。どの出来事もレニーにとっては自分の気持ちに反した結果であり、悪意というものの全くない本人にとっては思いもしない結果である。
 ジョージはレニーがリンチにかけられることを不憫に思い、自分の手で射殺する。当時のアメリカをよく表しながら、暴力的でなく温かいものの伝わってくる作品です。
 
長岡天神,キリシマツツジ





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 きりしまつつじ
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