《私の本棚 第七十二》 平成15年3月
「居酒屋」 エミール・ゾラ 作
この小説を読み始めると、なぜかくも悲惨な状況を書き連ねるのかという疑問が湧きます。人は努力しても幸せになれない のか?と・・・・。 女主人公ジェルベーズは不幸な結婚から解放されて新しい家庭を持ちます。洗濯屋を始めて繁盛しますが、それも長続きしません。夫ランチェのアル中と死。自分自身も拾い食いまでするほどの困窮とアル中から孤独死。娘は転落の道を辿ります。 しかし最後まで読み終えると、不思議に最初の嫌な気分が残りません。この不思議さは何だろうと、ゾラが生まれた1840年頃のパリの居酒屋について調べてみました。当時無数にあった居酒屋は単に酒を飲むところではなく、諸事の相談の場所から食事、宿を兼ねていたようです。大衆にとっては大変重要な場所でした。しかし一方、酔いどれ、盗み、放蕩、怠け癖、貧困、家庭崩壊の温床だと非難されていたようです。何しろ、酒を止めてまじめに生活をした人には賞金まで出していた程です。 喜安朗氏著 「近代フランス民衆の個と共同性」 や、論創社発行 「パリ職業づくし」 を併せて読むと背景が良く分かります。 |
梅 【本文との関係---季節】 |
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