《私の本棚 第六十五》  平成14年8月  

           
「最後の授業」  ドーデ  

ドーデというフランス人作家は、あまり馴染みのない人ですが、少年少女向けの作品を書き残しています。1869年に出版された 「最後の授業」 は、その中の代表作です。私は小学生の頃に読んだ記憶があります。この短編小説で唯一、古さ、を感じるのは教室がアメル先生の自宅という点です。舞台はアルザスの小さな村の学校です。勉強嫌いのフランツは、宿題をしたことがありません。最後の授業の日も遅刻です。しかし先生はいつもと違い、優しくフランツを迎えます。教室の後ろには、村長さんはじめ色いろな人達が、授業を受けるために座っています。

 先生は 「ベルリンから命令が来て、アルザスとロレーヌの学校ではドイツ語以外の言葉を教えられなくなった」 ことを伝えます。そして最後に、黒板に大きくフランス語で、「フランスばんざい」 と書きます。フランツの悔悟の気持ちを通じて、同年代の子供だけでなく、大人にも訴えかけるものがあります。

 アルザスとロレーヌは、ドイツに国境を接しており、ドイツ領になったりフランス領になったりということを繰り返し、現在はフランス領です。住民はもちろんフランス人という意識を持っていますが、ドイツ語訛りがあって難しい背景を持っていたようです。 
多賀大社,万灯祭





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