《私の本棚 第三十八》 2000年(平成12年)5月
「草 枕」 夏目漱石 作
「山道を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。住みにくさが高じると、安いところへ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟ったとき、詩が生まれて、画が出来る。」 「吾輩は猫である」 を書き終えて間なしに書き出して、ほぼ一週間で脱稿したそうです。冒頭の文章は大変有名ですが、漱石がこれを書いた作意は捉えがたい難物と言う定評です。 漱石は 「草枕は世間で言う普通の小説とは全く反対の意味で書いたのである。ただ一種の感じ・・・・美しい感じが読者の頭に残りさえすればよい。」 と言っています。 英国に留学した後、東大英文科の講師をしたくらい英語に堪能。漢文の素養があり、文筆能力に秀でている。そんな作者は、この小説の中で遺憾なく 「あらゆる自分」 を発揮しています。俳句・漢語・漢詩・英語詩・絵画的価値観・そんなものが散りばめられています。それでいて嫌みを感じません。 |
新緑の宇治川(塔の島と左岸の間)と ↓喜撰橋から浮島十三重石塔 風景 |
一戸兵衛書の石碑 平家物語 |
前の頁
,八十日間世界一周 次の頁 ,四面楚歌 第一分冊目次
第一分冊トップ頁 Vol V,トップ頁 Vol U,トップ頁 (1)吾輩は猫である (1905.01〜1906.08) (2)倫敦塔(1905.01.) (3)カーライル博物館 (.1905.) (4)幻影の盾 (1905.04.) (5)琴のそら音 (1905.07.) (6)一夜 (1905.09.) (7)薤露行 (1905.09.) (8)趣味の遺伝 (1906.01.) (9)坊っちゃん (1906.04.) (10)草枕 (1906.09.) (11)二百十日 (1906.10.) (12)野分 (1907.01.) (13)文学論 (1907.05.) (14)虞美人草 (1907.06〜10) (15)坑夫 (1908.01〜04) (16)三四郎 (1908.09〜12) (17)文鳥 (1908.06.) (18)夢十夜 (1908.07〜08) (19)永日小品 (1909.01〜03) (20)それから (1909.06〜10) (21)満韓ところどころ (1909.10〜12) (22)思い出すことなど (1910〜1911) (23)門 (1910.03〜06) (24)彼岸過迄 (1912.01〜04) (25)行人 (1912.12〜1913.11) (26)私の個人主義 (.1914.) (27)こころ (1914.04〜08) (28)硝子戸の中 (1915.01〜02) (29)道草 (1915.06〜09) (30)明暗 (1916.05〜12) |