私の本棚 第二十一》   1998年(平成10年)12月
      
    「あゝ野麦峠」   山本茂実 著

 野麦峠の名を知らない人は少ないと思いますが、多くの資料を集めて、事実に忠実に書かれたドキュメンタリーです。かつて外貨を稼ぐ産業の無かった明治時代に、莫大な富をもたらしたのは製糸業でした。その様な時代に飛騨の高山から、製糸業中心地の諏訪湖畔へ多くの女工さんが峠を越えたわけですが、中には今の小学生位の子供も含まれていたようです。年末の帰省は工場の男衆が付き添って雪の峠を越えたという事です。降雪量のすさまじさは、何百人が一列になって峠を越えた後でも、少しの時間を空けると小人数では越える事が出来ないくらいでした。親に対する前貸金・賠償予約・17〜18時間の労働・粗食・外からの施錠。こういった実態を知らなければ理解できない労基法の条文も残っています。
 それにも増して凄いのは、「女工哀史?そんな事はない。腹一杯食べられたし金儲けもさせてもらったし、楽しかった。」 と言う大半の元女工さんの言葉。当時の高山地方の農村が、表現出来ないくらいの極貧であったと言う事を表わしています。機会があれば、峠を再訪したいと思います。
雪の白川合掌造り








 雪の白川郷
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